USC便り Vol.5

2017.03.19

USC便り Vol.5
今では恒例となった「バッハ・ウィーク」が、先月ロサンゼルスで開催されました。元々はMs. Gotoが教鞭をとっている南カリフォルニア大学(USC) のヴァイオリンの研究室のプロジェクトで、オーディションやコンクールでいくつかの楽章だけ抜粋して演奏する機会はあっても、1曲をリピートも含めて通して演奏する機会の少ないバッハの「6つのヴァイオリンのための無伴奏曲」に込められた技術・解釈を自分なりに研究し、教えられたものの蓄積を披露する場となっています。この活動は既に10年以上行われており、2014年からはMs. Gotoの同僚が教えているアズサ・パシフィック大学(APU) のチェロの生徒たちが加わり、2016年以降はカリフォルニア州立大学ロングビーチ校(CSULB) とラ・シエラ大学(LSU) のヴァイオリンやチェロ、そしてヴィオラの生徒らが参加するようになりました。会場もUSC以外の参加大学のキャンパスでも開催され、音楽を志す他校の、主に弦楽を学ぶ生徒たちとの交流がなされるわけです。今年は 参加希望者が多かったので、ほぼ2週間にわたって4つのキャンパスで8回もの演奏会が開かれました。
過去の「バッハ・ウィーク」では生徒たちに混じってMs. Gotoによるソナタやパルティータの演奏もありました。「これらのバッハ・ウィークでの演奏とそれまでの過程は、私自身のバッパ・プロジェクトやコンサート、またレコーディングの準備のためにもなりました。今年はアンカラ(トルコ)とサラソタ(フロリダ州)のコンサートがバッハ・ウィークと重なり、一緒に演奏できないのが残念!」とMs.Gotoは語っていました。アンカラのコンサート終了後、すぐにロサンゼルスに戻り、その足で会場に駆けつけたり、次の演奏会では終了後に自身のフロリダでのコンサートに向かったり、というハードスケジュールでしたが、生徒たちの演奏を見守るMs. Gotoの姿があちこちのキャンパスで見られたり、アンカラ土産のお菓子を囲んで生徒達とレセプションで懇談している姿も見られました。
聴衆にとってもこのような形で同じ曲を個性の違う演奏で続けて聴くチャンスはそうそうありません。年々成長する生徒達にエールを送りながら、Ms.Gotoが始めた「バッハ・ウィーク」が水輪のように広がり、彼らのモチベーションとなっているのを身をもって感じられたのは素晴らしい収穫でした。
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文責:森 桂子

2018年1月20日

五嶋みどりからのメッセージ

日本の皆さまへ

寒中お見舞い申し上げます。

新しい年も明けてすでに半月ほどが経ちました。昨年末にミュージック・シェアリングのICEPの活動で若手演奏家3名とインドを訪問し、現地の子どもたちや、まだまだ改善の余地が残る社会から置き去りにされている人々に私たちの音楽を届けることができました。ICEPの活動で訪れた国もインドで9カ国目となりましたが、毎回この活動を通じて、音楽という一見生活の装飾に値するのではないかと思われるものが、実は子どもたちに無尽蔵の可能性を与えるものであることを目の当たりにするのです。

瞼を閉じればまだインドでの光景がフレッシュに蘇りますが、6月には「報告コンサート」という形で、皆さまともこの経験を分かち合うことを心待ちにしています。また同時期に日本全国の小学校、特別支援学校、病院、施設等も訪 問し、私の脳裏に焼き付いたインドでの経験と、その時と同じメロディーもお届けします。

ミュージック・シェアリングの活動以外では、今秋からカーティス音楽院で教鞭をとるため、10年以上住み慣れたロサンゼルスから、フィラデルフィアに転居します。何度となく訪れたフィラデルフィアでもいざ住むとなると勝手が違います。

ロサンゼルスは年中温暖な気候で快適に過ごすことができましたが、フィラデルフィアは四季の移り変わりがありますもの。新しい学校で新しい生徒や同僚たちとの出会いも楽しみですし、ニューヨークへは電車で1時間半くらいで帰れるので、これまでよりも頻繁に家族にも会えるのも嬉しいです。

日本で皆さまとお会いできる機会が少ないのは残念ですが、7月にはPMF(札幌)でバーンスタインの「セレナーデ」を演奏します。

それでは、変わらぬ温かいご支援に感謝しつつ、皆さまの益々のご健勝をお祈りしております。どうぞお元気でこの一年もお過ごしください。

2018年1月20日

五嶋みどり